先日、仕事の帰りにデパ地下の魚屋さんへ寄ってみた。
やっぱり魚を見るのは楽しい。
特に楽しめるのは対面コーナーだ。
夕方だったけど、魚は整然と陳列され、左斜め上を向いている。
時々魚の向きを直したりと売り場に注意を払っている証拠。魚がグチャグチャになっている対面コーナーをみると、もうそれだけでお店のレベルが知れてしまう。
自分が対面コーナーの陳列を担当していたときも、如何に魅せる売り場にするか日夜研究していた。
水族館で魚が泳いでいるようなイメージにしたり、
魚を使ってお花の模様にしたり、
お皿や氷を使って高低差を出し、かまくらをつくる。
一番頑張った時は色んな小道具を使って竜宮城っぽい売り場にしてみた(2時間で解けて無くなる売り場に、3時間かけた)
「ね~みて、これすごい!」
「わ~、まるで泳いでるみたい」
「きれい!」
通りすがりのお客さんにも楽しんでもらう。子ども連れなら子どもが魚を見ている間にゆっくり売り場を見てもらいたい(だから水槽には色んな魚が必要だ)
デパ地下の魚屋なら当然だろう。
中国地方で最大規模のお店で働いていた。競合店の視察も時々入る(魚の見かたで、雰囲気で同業者はすぐに分かる。数人出来て、そのうち一人は現場の人間。包丁だこが見えてるよ)同業者にお褒めの言葉を頂くと、嬉しいものだ。
アワビとミル貝を並べて陳列するような下品をことをしてはいけない。
本題に戻ろう。
対面コーナーで魚を見た後、パックコーナーを拝見した。
となりでお買いもの中の、感じの良さそうな女性から気になる言葉が聞こえてきた。
「あら、これ天然もの」
「旬になっているからこちらにしようかな」
調理済みのパック魚に張ってある、「天然」や「今が旬」のシールを見ての会話の様だ。
あまり魚に詳しく無いのかもしれない。
※写真はお店の許可を得て撮影、掲載しました
デパ地下のような高級食品売り場の魚屋はパックの見た目にもこだわる。
シールの有りなしでどの程度売上が変わるまでは把握できていなかったけど、何もシールを貼らないと、殺風景な陳列になってしまう。
「天然」「今が旬」「地物」などのシール。
どの魚にどのようなタグ付けをするか、明確なルールはない。お店のポリシー、スタッフの考え方次第だ(アルバイトが適当に張っていない事を祈りたい)
お魚に詳しい方なら(そもそもパックコーナーで調理済みの魚は買わないだろうが)当然のことだと思うけど、このシールにはあまり惑わされないで欲しい。
上の魚はキツネカレイと言われる、山陰で地方で水揚げされる、カレイの一種だ。
煮付けや空揚げで食す。
このキツネカレイ、当然、養殖などはしていない。そもそも天然とうたう必要がない。
また、鮮度が落ちると若干臭みがでるので煮付けにするにも生姜を入れる等、臭み消しの工夫が必要だ。魚屋の時は、こういった魚を買って貰うことも必要だけど、上記の説明と、値段の差など、お客さんの意思決定に必要な情報を提供した上で判断頂いていた。
※正しく説明することで、調理済みの商品が売れなくなることもある。ただ、代わりの商品を買って頂く事で客単価があがり、美味しい魚を食べてもらう事でリピーターにもなる。この魚を煮付けにしたらどんな味がするのか、主婦ががんばって作った夕食の場でどんな声が上がるのか。
「この魚、なんかクセがあるね・・・」
魚屋のお客さんは、お買いものに来てくれる主婦だけではない。その先にいる、顧客の顧客。料理を食べさせる、大切な子どもや旦那さんだろう。
この商品の場合、天然シールはポンコツの車に「ハンドル付きです!」と言っているようなものだ。親切な店員さんに味を聞く時は、類似の商品(この場合は対面コーナーで売られている、地モノのカレイなど)との違いなどを観点に質問してみるのも良いだろう。
もうひとつは、
「今が旬」
確かに、イサキは今が旬だ。
初夏が旬の数少ない魚。
でも、目を見てほしい。
二日酔いで目が覚めた、旦那さんの目をしていないだろうか。
15年前のプリウスを「今が旬のハイブリットカーです」と売りつける車屋さんは居ないだろう。商品単価が低いからと言って説明責任がないわけではない。
※写真はお店の許可を得て撮影、掲載しました
イサキはクセの無い魚だ。
写真左下、白子を抱えているけれど、身にもそこそこ脂が乗っている。
これなら、食べても巧く調理すれば(やっぱり、煮あがり直後を食べてほしい)美味しいだろう。
ただ、対面コーナーで販売されている、刺身用のイサキ。一匹1,000円前後するかも知れないけれど、ぜひこちらも(あえて)煮付けにして食べてもらいたい。
煮汁が沸騰すると、身が反り返ってくるはずだ。
皮が弾ける。
濃いめの味付けで、中火でぐつぐつ、10分程度でたき上げる。
刺身好きなお父さんに、今日はあえて煮魚を出してみよう。
それも、作りたて、アツアツで。