夏場の食中毒の原因は腸炎ビブリオ
夏場の食中毒の多くはイカや貝などの魚介類に付着した腸炎ビブリオが原因です。腸炎ビブリオは海水や海底の泥に存在し、海水の温度や気温が上昇すると海水中で大量に増殖し、魚介類に付着して運ばれます。
夏場にイカや泥地を好む巻貝を購入した時は細心の注意が必要です。腸炎ビブリオは真水の中では生きていけないので、魚介類を調理する前に流水で十分に洗いましょう。
海の食材の雑菌洗浄は真水が基本ですが、真水で洗うことに抵抗のある方は真水で洗った後に海水程度の塩水にさっとくぐらせることで浸透圧の差による鮮度低下を抑えることができます。
刺身用のブロックを購入したとき、そのまま刺し身に切っていませんか?
元魚屋の私は刺し身用のブロックを購入した時、必ず流水で洗い流してから調理しています。
鯛やハマチ、生サーモンなど、定番の食材がブロックになるまでには以下のような工程があり、加工品になるまでに雑菌が付いてしまう可能性があるからです。
・頭を落として内臓を出す(魚屋はウロコを取らずに3枚におろす)
・三枚おろし
・皮を剥ぐ
・柵どり(ブロックへ)
・パッキング
・陳列
現場を知っている人間として、流水を大量に流しながら調理するためブロックになるまでの調理工程で細菌が付くことは少ないと思います。
しかしながら、その後の工程で別の食材から細菌が付着したり(雑菌の付いたトレイや備品などからの間接的な付着を含む)、細菌を含む水が散ったりと意図せず菌が付いてしまう可能性は低くは無いと感じています。
ブロックの身にウロコ等が付いていれば流水で洗った方が良いサインです。腸炎ビブリオなどの細菌は温度によっては急速に増殖するため、ひと手間かけて損はありません。
スピードよりも安全性
むき身にしたバイ貝。
貝のまま洗っても細菌や生臭さの原因となる汚れは残っています。貝のまま水洗い、むき身にして水洗い、塩もみをして水洗いと洗浄を繰り返すことで刺し身で食べられる状態になります。
下調理の完了したバイ貝のむき身。
新鮮な貝なのに生臭さが残っているのは塩もみが不十分であったり、塩もみ後のすすぎが不十分であることが大半です。そうでない場合、そもそも貝が痛んでいるかも知れません。
魚が入っていたパックも洗浄して使う
私が魚料理を作る時は基本的にすべての食材を洗い直すため、キッチンペーパーやお皿を大量に使用します。写真のように、魚が入っていたパックをお皿代わりに利用する際は、スポンジと洗剤でキレイに洗浄してから使いましょう。
ドリップは食材の天敵
刺し身は切ってすぐに食べるのがより美味しく召し上がるコツ。せっかく刺し身用のブロックを購入したのなら、食べる直前に作りましょう。
とはいっても一から作り始めると時間がかかって仕方ありません。
後は切ればいいだけ、という所まで調理したら、ドリップをふき取りキッチンペーパーで包んで冷蔵庫に入れておきましょう。
不安をあおるようなことを書いてしまいましたが、スーパーで販売されている食品は施設毎に定められた食品衛生管理者によって衛生的に管理されています。
食品衛生管理者は、食品衛生法第48条の規定により、製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならないこととなっています。
厚生労働省 食品衛生管理者について
スーパーで380円で購入した福岡県産のバイ貝。
冷凍のバイ貝と違い、甘みと旨みがしっかりと残っています。
お刺身用のブロックの洗い方
お刺身用のブロックを洗うと言っても真水でジャブジャブ洗っては味が落ちてしまいます。
スーパーから帰宅したら直ぐにパックから取り出し、流水で3秒間流した後、氷を入れた塩水へサッとくぐらせます。水分を吸ってしまわない様、キッチンペーパーで軽く押さえるようにして何度も水分を拭き取ってから冷蔵庫で保存します。歯ごたえと魚特有のにおい。塩水へつけるか、つけないかは3歳児でも体感できる程度に違いがあります。
子供の魚離れが報じられていますが、新鮮な魚を適切に調理して食べると魚嫌いにはなりません。
魚が美味しくなる季節
夏の終わりから魚に脂が乗ってくる秋にかけて、刺し身を食べる機会が増えてきます。
食中毒防止だけでなく、より美味しい魚料理を食べるため、スーパーから帰ったらお刺身用のブロックを洗ってみて下さい。塩水にくぐらせるのをお忘れなく。