日産のTVCM「自動運転技術(プロパイロット)」を見て、さすがにそれは無いと感じることがありましたので、この場をお借りしてご紹介したいと思います。
こちらが問題のCMです(写真はYoutubeをキャプチャしたもの)
自動運転技術(プロパイロット)のCMですが「あそぶなら、とことん遊びつくさなきゃ」の後に気になる文言が並びます。
「とことん遊び尽くさなきゃ、帰り道なんて気にせずに」
「帰り道は日産の自動運転技術」
「どんなに遊び疲れても、車が運転をサポート」
初めて見た時は思わず「はぁ!?」となりました。リンクを張ってますので、ぜひご覧ください。
URL https://www.youtube.com/watch?v=cmBOY3FgHH
それは無いと感じたこと
1.帰り道は気にしろ
3週連続で片道150km以上走り県外で魚釣りやプールで遊び、先日は大雨の中、名古屋まで車で遊びに行くなど「車でとことん遊び尽くしている」私ですが、一番気にしているのは移動時の安全管理です(特に帰り道)
体力と相談し帰り道が安全に運転できる範囲で遊ぶ。集中力の低下を感じたら休憩を取る、あるいは運転を控えるのは公道を飛び回るカメムシでも既知の心得。
ところが日産自動車は「帰り道なんて気にせずに」「どんなに遊び疲れても」と危険な状態での運転を推奨するようなことを仰っているではありませんか。
CMを真に受けた輩に自分や家族がひかれ「いやー、自動運転が効かなくってさ!」なんて言い訳されたらどうしろというのでしょう。
これは控えめに申し上げても「ふざけんじゃねぇ!」となります。
※そもそも疲れた状態の運転は「過労運転等の禁止」として、”過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。”と道路交通法第66条第一項で禁止されている。違反した場合の処罰内容は違反点数25点、3年以下の懲役または50万円以下の罰金と非常に厳しいものである。
2.自動運転技術という言葉の使い方
日産の自動運転技術(プロパイロット)、私としては自動運転ではなくSAE2相当の運転支援技術と理解しています。しかしながら、あれだけ自動、自動!と連呼されるとあたかも車が自動で運転してくれるような誤解を招きかねません。
事実、車に疎い私のオカンも「あんた、運転することが多いんじゃけぇ、日産の自動運転の車買いんさい」とバリバリの広島弁でめんどくさい電話をかけてきますし、私の子どもも「パパ、あの車は自動で走るんだって。パパもこれにしたら何もせんで楽チンじゃん!」と完全に乗せられている始末。あれは運転支援であって自動運転ではない!とイチイチ説明するハメになるコンシューマーの気持ちにもなっていただきたい。
SAE(アメリカ自動車技術会)が定めた自動化レベルの定義
自動化レベル2(部分的な自動化)
定義:運転環境情報による、操舵・加減速双方の運転支援を実行。他の動的運転作業は人間の運転者が実行。
出典 日産Webサイト
URL http://www2.nissan.co.jp/X-TRAIL/
なお、プロパイロットが自動運転システムでないことは日産のWebサイトのプロパイロットのページに記載されてはいますが、文字が小さく分り難い。CMでは”自動運転技術”というのに対し、こちらでは”自動運転システムではない”など、非常に紛らわしい物であります。
高速道路 同一車線自動運転技術「プロパイロット」*1 *2 *3 *4
*1 プロパイロットは高速道路や自動車専用道路で使用してください。
プロパイロットはドライバーの運転操作を支援するためのシステムであり、自動運転システムではありません。安全運転をおこなう責任はドライバーにあります。
*2 わき⾒運転やぼんやり運転などの前方不注意および雨・濃霧などの視界不良による危険を回避するものではありません。先行車との車間距離、車線内の位置、周囲の状況に応じてアクセル、ブレーキ、ハンドルを操作するなどして、常に安全運転を心がけてください。
*3 システムの能力には限界がありますので、システムだけに頼った運転はせず、常に安全運転を心がけてください。
*4 プロパイロットの操作方法や重要な注意事項などが記載されていますので、ご使用前に必ず取扱説明書をお読みください。
出典 日産Webサイト
URL http://www2.nissan.co.jp/X-TRAIL/point_propilot.html
「自動運転」を使いたいのは分りますが、現段階でその文言を使うのは言葉が独り歩きして勘違いされるかも知れないというのは容易に想像できるのでは。
※スバルは8月7日発売の新型レヴォーグからアイサイトの次世代版としてアイサイトver.3に全車速対応のステアリング制御機構を組み込んだアイサイト・ツーリングアシストを採用する(日産プロパイロットと同様の運転支援)スバルはこのシステムに関し一言も”自動運転”とは言わず、ドライバーの負荷を減らしツーリングを愉しむための機能としている。
3.自動運転技術の中身
最後にそれは無いと感じたのは、とことん遊び尽くした後に帰り道をプロパイロットに支援してもらうのは心許ないこと。
こちらについては素人が語っても説得力がないので、専門家のコメントとして日経ビジネスオンラインの「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」をぜひ読んでいただきたいと思います。
※無料の会員登録が必要です
なお、記事を閲覧するのに必要な会員登録が面倒な方向けに少しだけご紹介すると、「プロパイに頼り切って、ハンドルに手を置くだけでボサッと運転していると、相当危険だ。」と注意喚起されてる他、「プロパイロットとはつまり、「カーブの少ない高速道路で、ノンビリ流す時、或いはストップ&ゴーの渋滞時にのみ使えるプチ自動運転」と結論付けられています(その他、ミニバンにしては走りが良い、視界の良さがスバラシイ、CVTが時代遅れなど、読み物としても非常に面白い)
出典 日経ビジネスオンライン「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」
やっちまった日産
それにしても、日産はどうしてしまったのでしょうか。
セレナのCMから気になっていましたが、車自体はいい車であるにもかかわらず、あたかも自動運転であるようなCMは販売現場も困惑するのでは。日産を退社されたレジェンド水野和敏さんやGT-Rの田村宏志さんもこんな商売を望んでいるとは思えません。
スバルやマツダが走りの基本性能を高めることで疲れ難く事故を起こし難い車を作り、運転支援(アイサイト)はあくまでアシストであると謳うのに対し、あまりにも稚拙なプロモーションであります。
まとめ
高齢者の誤発進・踏み間違いによる事故が社会問題になっていますが、このままでは自動運転の過信や認識勘違いによる不幸な事故が起きる気がしてなりません。
日産自動車様には1人のドライバーとして安全を阻害するような車の乗り方や、高齢者や車に詳しくない人が誤解を招くようなCMは控えていただくよう、心からお願いする次第であります。