2018/05/19、XDプロアクティブ7人乗りマシーングレーを契約しました。
12月1日、マツダの担当営業さんにお誘いいただき、CX-8を試乗することができました。
出力アップしたスカイアクティブD2.2の走行性能、乗り心地、静粛性について、CX-5との比較を中心にレビューしたいと思います。
試乗車データ
マツダCX-8 XD プロアクティブ 2WD
オプション含めた概算乗り出し価格:438万円
エクステリア
初めてCX-8の実車を確認しましたが写真で見るより造形が深く、伸びやかなプロポーションはSUVというよりステーションワゴンのような雰囲気です。
フロントマスクはCX-5のメッシュグリルに対しフィンタイプ。
実写を見るまではスポーティーで塊感のあるCX-5の方が好みでしたが、こうして実車を見比べるとフィンタイプのCX-8もワイド感がありよいですね。個人的にはギラギラ・ゴテゴテ系が苦手なので好感が持てるデザインです。
サイズ的にはランドクルーザー・プラドと大差ない大きさですが、すっきりしたデザインのせいか、山のように大きいプラドに対し、CX-8はそこまで大きな車とは感じませんでした。
全体を見てあらためてCX-5と比べますと、まぁCX-5とそっくりです。おそらく車に詳しくない私の妻などはどちらがCX-8か見分けがつかないと思いますし、個人的にはもう少し差別化しても良かったのではと感じました。
インテリア
インテリアはCX-5とほぼ共通のデザインです。ハリアーやアルファードのような、これ見よがしの高級感はありませんが質感は高く、好感の持てるデザインです。
大型化され、CX-5に比べより高い位置となったセンターコンソール。高級感や包まれ感のためとはいえ、個人的には随分と高い位置にあるなぁ、と感じました。とはいえレクサスなどはさらに高い位置にありますのでこんなものでしょうか。
CX-5に比べるとLパケ同士の比較なら大きな違いは感じませんが、プロアクティブ以下のグレードの場合はメッキパーツの使い方などでCX-8の方がワンランク上の高級感があります。
センターコンソールはセパレートタイプ。偉そうにふんぞり返った肘を優しく支えます。
2列目から見たインテリア。
2列目用のエアコン吹き出し口にも風量調整スイッチが付いています。
また、写真からも分かる通り厚みのあるシートが大変心地よい。ゆったりと沈む座面をサイドからしっかり支えるシートで運転中も姿勢変化が少なく快適でした。CX-5に対して、シートの出来はワンランク上の出来だと思います。
ウインドースイッチ周りもCX-5がややプラスチッキーなのに比べ、CX-8ではトリムにメッキがあしらわれ高級感が増しています。
営業さん曰く、ボディー剛性強化のためCX-5に比べドアが若干重くなったとのことですが、実際に開閉した感想は「ちょっと重くなったかな?」という程度。CX-5と同様に、女性でも無理なく開閉できると思いますし、子どもの場合はちょっと重いと感じ、半ドアになることもたまにあるでしょう。
セカンドシート
今回の試乗車は7人乗りタイプ。セカンドシートには引き出し式のアームレストが付いています。シートを一番後ろにスライドした時の足元スペースはCX-5に比べこぶし一つ分の余裕があり、ゆったりと座れます。
ただし、初期型のCX-5と比較した場合は室内高が3センチほど低くなっていることや、シートの厚みが増したことで相対的に高い位置に座らされるため、頭上の圧迫感が気になりました。
CX-8や新型CX-5の室内高1,250mmはSUVとして悪くはない数値ですが、体感的に3センチの差は大きく、ハイト系ミニバンなど、背の高い車から乗り換える場合は閉塞感がつらいかも知れません。
室内高の比較
新型CX-8:1,250mm
新型CX-5:1,250mm
初期型CX-5:1,280mm
ランドクルーザー・プラド:1,240mm
レクサスRX:1,200mm
ヴォクシー:1,400mm
アルファード:1,400mm
サードシート
サードシートにも乗り込んでみました。
セカンドシートを一番前までスライドさせた状態で乗降スペースはこれくらい。
若い人や子どもには全く問題ありませんが、大柄な人やお年寄りが頻繁に乗り降りするのは正直しんどい。雨の日は濡れた靴でセカンドシートの後ろが汚れそうです。
サードシートに座った感想はさすがに175センチで座高チャンピオンの私には窮屈でしたが、子どもや小柄な人なら問題ないスペース。シートもミドルサイズミニバンと遜色ないクッション厚で座り心地も上々です。
時間の都合上、サードシートに乗っての試乗は体験できませんでしたが、営業さん曰くGベクタリングや上質なサスペンションの効果もあって乗り心地はミドルサイズミニバンに負けないとのことでした。
ラゲッジスペース
3列目シートを起こした状態のラゲッジスペースはミニマムです。我が家の使い方でいうと、釣り、スノーボード、キャンプの荷物はまず載らず、どちらかのシートを倒すか、ルーフキャリアが欲しいところ。
ラゲッジカバーの下には実用的な収納スペースがあります。
ここも使えば定員の1泊2日旅行程度の荷物なら十分乗るでしょう。
静粛性
スタートボタンを押してエンジン始動。ディーゼルのノックオンや振動はよく抑えられており、アイドリングの静粛性はCX-5に比べ静かに感じます。しかしその差は僅差でCX-5オーナーが地団駄踏んで悔しがるほどではありません。
スカイアクティブD2.2に関してディーゼルと言われなければ分からないという提灯記事を目にすることもありますが、それはウソだと思います。ガラガラ音こそ無いものの、少なくとも60キロまではそれなりの音量を確認できます。
その傾向はCX-8でも同様でロードノイズや風切り音はよく抑えられているものの、エンジン音に関しては以外なほど耳に入ります。特に発進から2,500~3,000回転まで回すようなやや強めの加速をしたときに顕著で、フラッグシップSUVというからにはもう一つ頑張ってほしいところ。
ただ、60キロ以上になるとそれまでの印象は逆転し、一般道を走った限り流れをリードするようなペースでもエンジンは粛々と、かつ1,800キロに達する巨体を力強く蹴り出します。
家族でお出かけするときは2,000回転以下で事足りるエンジンパワーに任せ、会話を楽しみながらドライブ。たまに一人で楽しむときは積極的に回してエンジンの鼓動を味わうというぜいたくな使い分けができるのもこの車ならではの魅力でしょう。
走行性能
続いて最も関心のあったCX-5と比較した走行性能のレビューです。
XD プロアクティブ 2WD同士の比較で車両重量とエンジンスペックの違いは下記の通り。
CX-5:車両重量1,620kg、エンジン175PS/42.8kgf
CX-8:車両重量1,820kg、エンジン190PS/45.9kgf
CX-8に搭載されるにあたり2012年のデビュー以来、初めて出力アップしたスカイアクティブD2.2ですが、重量にしてCX-5比12%増に対してエンジンは馬力8%増、トルク7%増という伸び幅。
マツダ曰く、進化したSKYACTIV-D 2.2のポイントとして
・よりリニアで伸びのある加速
・定常走行からの加速ではCX-5と同等の動力性能を実現
をあげられていますが、数値上では絶対的にCX-5が有利な状況でマツダのエンジニアは3列シート化による重量増などのネガをどのようにまとめたのか。意外なことにその結論はディーラーの駐車場を左折し、先行車に追いつくまでの数秒で理解できました。
ディーラーの駐車場を左折した際、後述しますがステアリングがCX-5に比べややスローなこともあり、若干もたつきながら片側2車線の道路へ侵入。その後、先行車に追いつくべく記憶の限り新型CX-5 XDと同等の力加減でペダルを踏み込むと、、発進から30~40kmまでの到達にCX-5に比べ若干の重さを感じます。
もちろん、1.8トンの3列シートの車としてはウルトラスムーズに速度を上げることができますが、CX-5に比べてしまうと最も遭遇頻度の多い発進から40kmまでの加速において若干ながらも無視できない重さを感じる瞬間があり、今回の試乗においてはこの点が一番気になったポイントでもありました。
マツダの言う「定常走行からの加速ではCX-5と同等の動力性能」はCX-8とCX-5の動力性能の違いを最も端的に表した表現で、付け加えるなら「発進加速においてはCX-5が僅かにリードする」になりますでしょう。
誤解の無いようにもう一度書きますがCX-8は決してモアパワーではありません。むしろ40km以上の速度域からは重量増による安定性の高さもありCX-5以上に安心して飛ばせるSUVです。
ただし、出力アップしたSKYACTIV-D 2.2はCX-5比200kg増のハンデを補うには至っておらず、3列目の使用頻度が低く走りにこだわりのあるユーザーは積極的にCX-5を選んでよいと思います。
取り回し
CX-5とCX-8の取り回しを比較するうえで、2車の違いは下記の通り。
●CX-5
全長:4,545mm
全幅:1,840mm
ホイールベース:2,700mm
最小回転半径:5.5m
●CX-8
全長:4,900mm
全幅:1,840mm
ホイールベース:2,930mm
最小回転半径:5.8m
CX-5に対してCX-8の方が全長で355mm大きく、ホイールベースで230mm長く、最小回転半径で0.3m取り回しが悪くなっています。
経験上、全幅に関してはそれほど影響ないものの、全長が4,700mm、最小回転半径が5.5mを超えると狭い路地や駐車場の取り回しが辛くなるところ。
今回の試乗コースではこれらの違いが問題になるほどの狭い道は体験できませんでしたが、CX-5でギリギリ1発で曲がれる道路もCX-8の場合は切り返しが必須。車としては大変魅力的なものの、これ以上大きいサイズへの乗り換えは妻の説得に苦労しそうです。
乗り心地
乗り心地に関しては期待通り。ステーションワゴンに乗っているようなフラット感に、段差のいなし方もうまく、上質な乗り心地です。
乗り心地がよい理由はもともと乗り心地の良かったCX-5に対し200kgほど増えた車重によって重厚感が加わりました。また、230mm延長されたホイールベースもピッチングや細かい上下動を抑えるのに効果的。約30センチ全長を伸ばすにあたり強化されたボディ剛性は塊感のあるボディーとそれによってしなやかに動く足回りのおかげで、マツダのフラッグシップに相応しい乗り心地を実現しています。
ハンドリング
ハンドリングに関して最初に感じたのは剛性感の高さです。段差を乗り越えた時の振動の少なさやまっすぐ走っているときに車に一本線が入っているような剛性感はCX-5よりもいい車に乗っていると感じる程度に違いあり。
ただし、ボディー剛性や直進安定性はフォルクスワーゲン・ティグアンのレベルに至っていないのも事実。CX-5からの乗り換え候補としてティグアンも試乗しましたが、新型CX-5と比べてもティグアンの剛性感や直進安定性はワンランク上で、CX-8と比べてもティグアンの方が僅かに上だったように感じています。マツダ車が今後プレミアムなブランドになるためには優先的に改善してほしいところ。
また、サイズアップと重量増の影響からCX-5ほどの回頭性の高さはなく、CX-5に比べスローな印象です。先に述べた通り私はCX-5のハンドリングが完全にしみ込んでしまっているため、大回りになったりややもすればモッサリしてると感じる場面もありました。この辺の試乗はあくまでシロートの試乗なので実際に購入して自分の車として気兼ねなく振り回せば印象も変わるかも知れませんが。
CX-5とCX-8の違い
ここで主に走行性能の面でCX-5とCX-8の違いをまとめます。
動力性能に関してはCX-8の方が高出力なスカイアクティブD2.2を搭載するものの、重量増の影響からCX-5の方が加速性能が高く痛快な印象です。
乗り心地の面では重量増やボディサイズの拡大が完全にプラスに作用しておりCX-8の方が1ランク上の上質な乗り心地。
静粛性に関しては若干CX-8の方が静かに感じるものの、比べなければ分からないレベルでどちらも高い静粛性を実現しています。
直進安定性は重量とホイールベースの延長が効いておりCX-8の圧勝。
ハンドリングは全長4.9m、重量1.8トンの車としては望外によいものの、CX-5の方がまるでコンパクトカーに乗っているような気持のいいハンドリングを実現しており、CX-5の勝ち。
3列シートが必須でない方は、どちらもいい車ですのでお好みでどうぞというラインナップとなっています。
燃費
CX-8の燃費はJC08モード燃費17.6kg/Lで、WLTCモード燃費15.8kg/Lと1.8トンのSUVとしては望外によい性能です。
燃費に関しては試乗のため不明。ただ、燃費に関しては一切関心がないといっては語弊がありますがマツダの作るディーゼルですから、車に対して十二分な数値を出してくれるでしょう。当日、営業さんとはCX-8を始めさまざまな話題で盛り上がりましたが、燃費のねの字も出ませんでした。
CX-8を試乗した感想まとめ
最後にCX-8を試乗し2017年発売の新型CX-5と比較した感想のまとめです。
●エクステリアはCX-5と大差なく、どちらも優れているためどっちでも良いレベル。
●走行性能は出だしにやや重さを感じるが、走り出せばCX-5とそん色ない加速フィール。走り出してしまえば重さが良い意味で効いており、安定性が高く重厚感がある。
●CX-9をベースに作られているため、静粛性や乗り心地はCX-8の方が明らかにワンランク上。
●インテリアはプロアクティブ以下はCX-5との差が大きい。Lパケなら大差なし。
●3列シートの居住性は思ったより良好。ただし、ヒンジドアのため、一般的な駐車場では乗り降りが辛そう。フル乗車が月イチなら問題ないが、週イチなら無難にスライドドアがおすすめ。
●CX-5とCX-8どちらを買うかと言われたら、7人乗りが必要ならCX-8。7人乗りは不要でも、CX-5までのスポーティーなハンドリングが不要ならCX-8。あとは好みで。
デザインと走りの良い3列シートのSUVとして、CX-8は大変魅力的な車でした。