車を買う時に耳にする「新車購入から3年毎(初回車検前)に車を乗り換えると下取りが高くてお得」という説。
果たしてホントにお得なのか、それとも営業トークに乗せられているだけか。
今回は3年毎に乗り続けた場合や10年乗った場合の総費用を人気車種の残価率を元に試算してみました。
なお、試算は全て現金一括で購入し、残価率の下取り価格が付いたとして計算しています。残価設定ローンの場合、利息が発生するため、以下の試算よりも不利な条件になることに注意してください。
前提条件
乗り続けた場合と乗り換えた場合を比較する前提条件は以下とします。
・新車購入/乗り換え費用は諸経費コミコミで300万円とします。
・諸経費は10%、車両価格は270万円とします。
・3年後、5年後の残価率は、車両価格270万円に対しての割合とします。
・3年、5年で乗り換えた場合と10年乗り続けた場合を比較します。
・乗り続けた場合、4年目にタイヤとバッテリー交換として10万円掛かるとします。
・3年目と5年目の車検は10万円、7年目の車検は30万円、9年目の車検は20万円とします。
※7年目に足回りなどをある程度交換整備する前提
10年乗り続けた場合
最初に、新車を買う時によく聞くフレーズ「10年乗ります」について試算します。
新車を購入し、10年後に新しい車を購入するパターンです。10年乗るため、10年後の下取り査定はゼロとします。
その間、車検は3年目、5年目、7年目、9年目の計4回通す形になります。
10年乗るとタイヤ・バッテリーは4年目、8年目の計2回買い換えが必要です。
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1年目の車代:300万円
10年目に乗り換える車代:300万円
車検代:10+10+30+20=70万円
タイヤ/BAT:10+10=20万円
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合計:690万円
果たしてこれが高いのか安いのか、次を見ていきましょう。
3年で乗り換える場合(残価率55%)
次に3年毎に下取りと追い金で新車に乗り換えた場合を試算します。
3年後の下取り価格はマツダCX-5、CX-8など人気車種の残価率、55%とします。
※車両価格270万円に対して、55%の残価(148万円)
なお、3年で乗り換える場合は車検費用は掛かりません。また、月1,000kmの一般的な利用状態の場合はタイヤやバッテリーも交換することなく乗り切れる場合がほとんどです。
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1年目の車代:300万円
3年後の車代:152万円(下取り148万)
6年後の車代:152万円(下取り148万)
9年後の車代:152万円(下取り148万)
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合計:754万円
仮に新車購入時の車両価格に対して55%という良い下取り査定が付いた場合、3年毎に新車に乗り換えた場合の合計金額は754万円となりました。
流石に、55%という良い査定(残価)でも、10年乗るより高くなりましたね。
ここでよくある試算の注意として、稀に残価を車両価格(とオプション込みの価格)ではなく、諸経費コミコミで試算しているものがあります。仮に400万円の車の場合、諸経費で25万円近くになるため、諸経費込みで計算していると「思ったより残価が低い…」となりますので注意してください。
3年で乗り換える場合(残価率60%)
次に3年後の残価を60%で試算します。人気車種の場合、60%以上値が付くことも珍しくないので、人気車種を買ったらどうなるか?という試算になります。
※車両価格270万円に対して、60%の残価(162万円)
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1年目の車代:300万円
3年後の車代:138万円(下取り162万)
6年後の車代:138万円(下取り162万)
9年後の車代:138万円(下取り162万)
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合計:714万円
新車購入時の車両価格に対して60%という非常に良い下取り査定が付いた場合、3年毎に新車に乗り換えた場合の合計金額は714万円となりました。
金額的には10年乗る場合に比べ、まだ高くなりますが、その差はわずか。
10年前の車と言えば、車によっては2世代前のモデルです。燃費が悪かったり、安全装備が付いていなかったり。デザインに関しても古臭さが気になり始めるかも知れません。
誤解を恐れずに言うと、10年我慢して乗り続けた車に対して、3年毎に乗り換えてもプラスたった20万円程度。
※好きで10年、20年乗り続けるという方にはホントにごめんなさい。単なる金額的な比較です。
もし、燃費や税金、保険などが高い車の場合はこの差はほぼ無くなります。
この差をどう見るか。私なら少なくとも家族と移動する年代や、家族の成長に応じて大きな車が必要になるタイミングでは、3年でその時に必要な車に乗り換えた方がメリットがあると感じます。
3年で乗り換える場合(残価率40%)
次に3年後の残価を40%で試算します。60%を見た後では随分低く感じますが、55%以上の残価が付くのは売れ筋や価格コムの人気ランキング上位入る人気車種のみ。今回の中では比較的現実的な試算になります。
※車両価格270万円に対して、40%の残価(108万円)
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1年目の車代:300万円
3年後の車代:192万円(下取り108万)
6年後の車代:192万円(下取り108万)
9年後の車代:192万円(下取り108万)
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合計:876万円
10年乗り続けた場合に比べ、200万円近く高くなりましたね。このように一般的な下取り査定の車の場合、出費が多く3年毎に乗り換えるのはまだまだ贅沢だと思います。
■3年で乗り換える場合(残価率30%)
次は3年後の残価を30%で試算します。
残念ながら不人気車を買ってしまった場合です。
※車両価格270万円に対して、30%の残価(81万円)
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1年目の車代:300万円
3年後の車代:219万円(下取り81万)
6年後の車代:219万円(下取り81万)
9年後の車代:219万円(下取り81万)
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合計:957万円
10年乗り続けた場合との差はさらに広がりました。なにより、たった3年乗っただけで下取りが80万円しかつかないと聞いたら、売る気はなくなるかも知れませんね。
5年乗り続けた場合(残価率40%)
次の比較として、5年毎に新車に乗り換える場合の試算をします。
新車を購入し、5年後に新しい車を購入するパターンです。5年後の査定は人気車種レベルの40%とします。
その間、車検は3年目×2の計2回通す形になります。
5年乗る場合もタイヤ・バッテリーは計2回買い換えが必要です。
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1年目の車代:300万円
5年後の車代:192万円(下取り108万)
車検代:10+10=20万円
タイヤ/BAT:10+10=20万円
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合計:724万円
5年後の査定が40%と良い場合は10年毎に乗り換えた場合のプラス30万円程度であることが分かりました。
一般的な走り方の場合、タイヤやバッテリーは4年目で交換になります。4年目で交換して次の車検前に売ってしまうのはモッタイナイ気がしますが、これくらいの価格差であれば新しい車に乗り換えた方がメリットがありそうです。
5年乗り続けた場合(残価率30%)
次に5年後の残価を30%で試算します。
5年後の残価としては安くてもこれくらいは欲しいところでしょうか。
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1年目の車代:300万円
5年後の車代:219万円(下取り81万)
車検代:10+10=20万円
タイヤ/BAT:10+10=20万円
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合計:778万円
残価率40%の試算に比べプラス50万円多く支払う形になりました。
とはいえ、10年乗り続けた場合に比べると、その差は100万円もありません。
10年乗ると故障のリスクも増えます。一般的にメーカーの保証は3年まで。マツダの場合、延長保証を付ければ7年まで延長できるので安心ですが、7年目以降に故障した場合は急な出費を覚悟しなければなりません。5年なら消耗品の交換も少なく、見た目的にもまだまだ現役ですから、5年で乗り換えるのはメリットがありそうです。
その他のパターン
7年目に乗り換えた場合は7+7=14年となり、他のパターンと比べ期間の比較が難しくなることから割愛しました。また、今は欲しい車が無いからとりあえず3年乗って次の車に長く乗るの3+7やその逆の7+3も割愛します。
下取りが高い車種
参考までに下取りが高い代表的な車種は以下の通りです。
トヨタ・ハイエース(盗難率も異常に高い)
トヨタ・ランドクルーザープラド
トヨタ・アルファード
トヨタ・ノア/ヴォクシー
マツダ・CX-5
ハイエースやプラドは海外で大人気のため、5年後でも50%以上の査定が付いたり、10年乗っても驚くほどの値段になることが珍しくありません。3年毎に乗り換えるため、下取りを期待するならこれらの車を選んでおけば有利に乗り換えできる可能性が高いでしょう。
下取り変動リスク
購入時の残価率が55%の車でも、新型車がデビューすると一気に下がることがあります。デビューしてすぐの車なら、3年後の査定は期待できますが、モデル末期の場合は厳しくなると予想されます。
そういう車を買う場合は3年の残価設定ローンで買うことで3年後の下取りを保証されますが、残クレは利息の支払いが大きくなるデメリットもあります。
人気がある車でも中古車の玉数がタブついてくると、査定が渋くなりますので、気になる方は一度ディーラーなどで確認するのがおすすめ。
なお、買う気が無いとみなされた場合、本気の下取りは期待できません。ザックリであれば同条件の中古車販売価格を調べ、その金額から20%程度マイナスした金額が目安になります。
経済性で10年乗ります?は合理的なのか
車を買う時に長く乗るから、という理由で決断したり、奥さんの許可が下りることはないでしょうか。
ここであらためて10年乗ることを考えると、7年目以降は保証が無いので相応のリスクがあります。それまで所謂通すだけの車検整備しかしてない場合は、車両のコンディションも本来の性能とはかけ離れているはず。最新の車に比べ燃費が悪い場合は維持費も掛かります。安全装備については今や歩行者検知自動ブレーキは付いてて当たり前。ここ数年で一気に進化していますので、触れるまでもないでしょう。
整備して乗り続けることを否定するつもりは全くありませんが、車の基本性能や安全装備を考えると、こと経済性だけを理由に「10年乗ります」は、説得力があるとは言えません。
皮算用
今回の試算はあくまで皮算用になります。3年で乗り換えについては実際には車検の前に乗り換える必要がありますので、納車スケジュールを加味すると満3年乗るのは難しい。そうなると10年乗り続けた場合の試算は不利な方向へ振れます。
逆に新しい車の場合はエコカー減税などで税金が還付されることもあり、試算は有利な方向へ振れます。古い車で排気量が大きい場合は無視できない差になるかも知れません。
また、今回の試算は毎回300万円の車に乗り換える試算になっていますが、実際には20代、30代、40代とその時の環境に応じて必要な車は変わることも多いでしょう。
3年で乗り換える場合も、趣味性の高いランドクルーザープラドからファミリーカーのヴォクシーに乗り換えた場合は下取り金額だけで買えてしまうかも知れません。コンパクトカーからアルファードに乗り換えた場合は下取りは頭金の足しになる程度でしょう。
逆張りとして下取りを狙うのではなく、不人気で値下がり率の高い(残価が低い)車、例えばB○Wの6シリーズなどは3年落ちで驚くほど安くなっている車両も珍しくないですね。そのような車を格安で買い、きっちり整備して長く乗り続けるのも面白いかも知れません。
まとめ
今回の試算から、3年毎に新車に乗り換えるのは悪くない買い方であることが分かりました。うまくモデルチェンジの波に乗れればかなりお得に新車に乗り続けることができます。
いずれにしても納車スケジュールを考慮し、車検の3ヵ月前くらいのタイミングで一度真剣に乗り続けるか、乗り換えるかディーラー巡りをするのがおすすめです。車検を受けた後や、タイヤやメンテナンスパックなどを買った後では勿体無く感じ、動きにくくなってしまいますので。
というわけで、週末はお近くのディーラーへ。
思わぬ気付きがあるかも知れませんよ(^^♪
2018/06/28 追記
20年乗り続けた場合
10年乗り続けた場合と3年毎に乗り換えた場合の違いが微妙だったので、期間を20年で比較してみました。
新車を購入し、10年後に新しい車を購入するパターンです。10年乗るため、10年後の下取り査定はゼロとします。
その間、車検は3年目、5年目、7年目、9年目の計4回通す形になります。
10年乗るとタイヤ・バッテリーは4年目、8年目の計2回買い換えが必要です。
その後の10年も同様に車検やタイヤ・バッテリーを交換し、20年目後に新しい車を購入した場合の試算です。
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1年目の車代:300万円
車検代:10+10+30+20=70万円
タイヤ/BAT:10+10=20万円
10年目に乗り換える車代:300万円
車検代:10+10+30+20=70万円
タイヤ/BAT:10+10=20万円
20年目に乗り換える車代:300万円
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合計:1,080万円
20年間3年で乗り換える(残価率60%)
次に3年での乗り換えを20年続けた場合の試算です。残価は60%と人気車種を購入した前提としています。
※車両価格270万円に対して、60%の残価(162万円)
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1年目の車代:300万円
3年後の車代:138万円(下取り162万)
6年後の車代:138万円(下取り162万)
9年後の車代:138万円(下取り162万)
12年後の車代:138万円(下取り162万)
15年後の車代:138万円(下取り162万)
18年後の車代:138万円(下取り162万)
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合計:1,128万円
10年乗り続けた場合と比較して、48万円高くなりましたが、やはりその差はわずかです。
正確に言うと10年乗り続けた場合は20年後に新車に乗っているのに対し、3年毎に乗り換えた場合は18年目に乗り換えた車が2年落ちの状態。若干ですが10年乗り続けた方が有利な結果です。
ただ、20年目にフォーカスすると10年乗り続けた方がお得に感じますが、3年毎に新車に乗れるのは数値以上の価値があるのも事実。仮に10年乗り続けた場合、20年間で3台の車しか乗れませんが、3年毎に乗り換えれば同じ期間に7台も乗れるのです。
20年で50万円くらいの差額なら、3年毎に乗り換えた方がイイ!と考えてしまうのも納得ですね。