今回はCX-8の2WD(FF)とAWDの違いについて。
はじめに一般論的なところを述べますと、マツダのSUVはAWDとFFを比較するとAWDの方が前後重量バランスが良く操安性や乗り心地も良い傾向があります。
またAWD車は電子制御で駆動トルクをほぼFFの前99:後01から滑りやすい路面では最大で50:50まで前後に配分するため、FFに比べ悪路走破性が高く雨の日などの走行安定性も高くなります。
反面、FFに比べAWDは同グレード比で70kg重く加速時の軽快感や燃費性能で劣ります。車両価格もグレードによりAWDの方が23万~24万円ほど高く、経済的にはFFの方が優れています。
FFとAWDの違い
マツダに確認したところ、サスペンションのセッティングはFF車とAWD車で一部異なるようです。ただ、その違いは「重量や車両の性格に合わせ最適化しているが影響は少ない」とのこと。その他の違いは、リヤのフロアおよびサブフレームの有無、そして同グレードで比較した場合にAWDの方が70kg重い車重です。
ステアリングのロックトゥロックは共通。Gベクタリングコントロールの違いについては情報が無いということで回答を得られませんでした。
なお、マツダのAWDは前後のトルク配分のみで左右のトルク配分(トルクベクタリング)はありません。
※2018/08/24 一部内容を訂正しました
ジャーナリストの評価
FFとAWDを比較したジャーナリストの試乗レビューでは完成度や乗り心地含め総じてAWDの方が高く評価されています。以下、一例。
単純に車重が軽い分、加速およびコーナリング時の軽快感はFF車の方が優れるものの、前輪スリップ予兆検知システムを持つ「i-アクティブAWD」のおかげもあり、4WD車の方が直進安定性は高くアンダーステアも出にくい。シャシーセッティングの完成度は明らかに4WD車の方が高く、また多人数乗車が可能な高級クロスオーバーSUVというCX-8のキャラクターにもよりマッチしているように感じられた。
出典 モーターファン マツダCX-8試乗・FFvs4WD
URL https://motor-fan.jp/article/10002775?page=2
2WDとAWDの価格を比較
CX-8の2WDとAWDの価格差はグレードにより23~24万円ほどAWDの方が高くなります(2018/08/18現在の価格)
CX-8 XD 2WD 319万円
CX-8 XD AWD 342万円
CX-8 XD プロアクティブ 2WD 353万円
CX-8 XD プロアクティブAWD 376万円
CX-8 XD Lパケ 2WD 395万円
CX-8 XD Lパケ AWD 419万円
数年後に乗換える場合は下取り査定時にFFよりAWDの方が査定が高くなる傾向にありますので、査定額の違いを含めるとその差は更に小さくなります。
2WDとAWDの燃費の違い
CX-8の2WDのJC08モード燃費は17.6km/L、対してAWDモデルの燃費は17.0km/LとJC08モード燃費比で3.5%ほど悪化しています。
仮に実燃費をJC08モード燃費の0.8掛けとして1ヶ月に1,000km走る場合に必要な軽油と、軽油を1リッターあたり125円とした場合の軽油代は以下の通り。
2WD:71.0L/8,879円
AWD:73.5L/9,191円
1,000km走ってもその差は僅か313円。年に12,000km走る場合も約3,600円とAWD化による燃費の悪化はほとんど気にしなくて良いことが分かります。
2WDとAWDの重量の違い
CX-8のFFとAWDを重量で比較すると、同グレードで70kgほどAWDの方が重くなっています。
CX-8 XD L Package 2WD:1830kg
CX-8 XD L Package AWD:1900kg
この重量の違いによる乗り心地や走りの違いについて、試乗車のCX-8(FF)と自分の車(AWD)を比較すると、乗り心地についてはジャーナリストの試乗レビュー通り若干AWDの方がしっとりと乗り心地が良い印象があります。ただ、乗り心地に関しては納車当日と、先ほど走行距離が1,000kmを超えてきた時点とでは若干印象が変わっていますので、少なくとも3,000kmまで走ってみないと良く分からないのが正直なところです。
加速性能の違いについてはギア比は2WD、4WD共通のためFFの方が早いはずですが、少なくとも70kg分の重量感は感じません。CX-8の加速性能についてはFF/AWDの違いは体感的に大きくなく、私の場合はむしろ前車初代KE後期型CX-5との違いが気になります。特にサービスキャンペーン対応前(DE精密過給制御無し)の加速は体感的に早かった。アクセルを踏み込むと一瞬のため(ラグともいう)の後に車体がフッと軽くなったように加速する様はまるでコンパクトカーにでも乗ってるような軽快感がありました。
余談ですが、初代KE後期型CX-5は走りが最高に楽しい車でした。そんな初代CX-5と比較するとCX-8はまさに大人な感じの乗り味ですが、欲を言えば車体の重さを感じないもう少しパワフルなエンジンを載せて欲しかった。もっとも、そんなエンジンでブイブイされる同乗者はたまったものではないでしょうが。
2WDとAWDの重量配分の違い
CX-8の前後重量配分をXD L Packageの車検証記載値で比較します。
○重量
CX-8 XD L Package 2WD:1830kg(前1070+後760)
CX-8 XD L Package AWD:1900kg(前1100+後800)
○重量配分
CX-8 XD L Package 2WD 58.4:41.6
CX-8 XD L Package AWD 57.8:42.2
前後重量比はFF/AWDでほぼ同じ約6:4。
FFベースのSUVとして前後重量配分は良好です(車種によっては前65:後35も珍しくない)
前後重量配分の影響が大きいハンドリングや回頭性について、FFとAWDを比較した感想としては少なからずAWDの方がバランスが良く感じました。最初はAWDの重量物がリアに積載される分、前後重量配分がFFより優れているのが原因と推察しましたが、車検証を見る限り重量配分はほぼ同じ。
マツダ車は全体的にFFでもFRの様に気持ち良く回れる車ですが、マツダのAWDはどこまでも切り込んでいけるFFの回頭性の良さを少しも犠牲にせず、カーブの途中から後半にかけて気持ち良く回れます。このハンドリングの良さの原因がどこにあるのかは現時点で理解できていません。AWDの性能によるものか、重量バランスか、Gベクタリングコントロールの制御の違いなのか。このあたりは今後分かり次第追記予定です。
→その後マツダに教えてもらった回答では、AWD制御により後輪へ駆動力が配分されAWDの方がより安定して走行したため、AWDの方が良好なハンドリングと感じられたのではないか、という見解でした。
まとめ
さいごになりますが、実際に乗り比べた上でCX-8は2WDとAWDどちらを選んだら良いのかについて。これについては私自身AWDを選んでおり、結論は出ています。雨や雪道など季節を問わず車に乗る方は予算的に許せばAWDを選ぶべき。
ここまで述べた通り、燃費が悪いネガは大した問題にならず、重いことはむしろ乗り心地でプラスに作用します。FFでは行けない道もAWDなら行ける。今どきの高性能なスタッドレスタイヤなら市街地や高速道路はFFで全く問題ないと思います(現に私も20年近くFR・FFを乗り継いでいる)ただ、スキー場までの残り100mなど、状況によってはAWDでなければ登れない坂というのも存在します。先行車がいなければ勢いを付けて登ることもできますが、先行車が停止した場合はアウト。雪道だけでなく、雨の日の安定感や現時点では理由が分かっていませんがAWDの方が回答性が良く街乗りレベルでも完成度の高さを実感できると思います。
以上。