FF(2駆)とマツダ新世代4WDシステム i-ACTIV AWDのどちらを選ぶべきか。年末に向け大雪の予報が出ていることもありAWDが気になる人も多いのではないでしょうか。
私の周りでもスタッドレスタイヤ買ったけど、FFで雪山に行くのはスタックが怖いという人もいます。いや、せっかくスタッドレス買ったのですから雪道走ってなんぼでしょ?と思わずにはいられないですが、無理をして事故をしてはいけません。雪道運転に慣れてなく、心配性で怖いという気持ちも分かります。
また、そんなに心配ならチェーンを携行すれば良いという意見もありますが、金属チェーンは音と振動が酷く、高性能なチェーンは地味に高い。何より雪が降る中、頭に雪を積らせ寒さで思うように動かない手でチェーンを巻くのは罰ゲーム以外の何ものでもありません。
そんな訳でこのブログでも繰り返し書いてますが、CX-8を買うなら雪道・雨の高速道路も安定感抜群で快適に走れるAWDがおすすめです。一方でAWDには車両価格が高い・燃費悪いというネガティブなイメージもあります。今回はAWDを選んで得られるもの・失うものを中心にAWDがおすすめの理由をまとめたいと思います。
最初に
はいはい、聞こえてきましたよ。
「いまどきのスタッドレスならFFで十分。AWD買うくらいなら旅行でも行った方がマシ。広島でFFで走れない場面なんて年イチも無い。チェーン買えば十分。寝ぼけてるの?」と言う声が。
そう思う方は大雪の日に広島県は恐羅漢スキー場の「内黒峠」を見に行ってください。登坂でスタックした車による盛大なスタック祭り&大渋滞が見れますから(大雪の日に内黒峠をFF+スタッドレス、ノーマル+チェーンで走るのはマジで大迷惑なので止めましょう。大規模林道でも場所によっては勾配やカーブがきついからFFはチェーン巻いた方が良いと思う)
いや、私も2年くらい前までは大雪以外はFFで十分と思ってました。実際、18歳で車を買った時はFRでケツを振りながら雪道走ってましたし、それ以降19年間もの間FRやFFの車を乗り継いできたのですから。そのため前車CX-5を買った時もやはりFFを選びました。商談の際、営業さんのFFとAWDどちらにされますか?に対して「AWDは高くなりますし燃費も若干落ちる。スノボに行きますがこれまでFFで問題無く、大雪の日は早めにチェーン巻くのでFFで大丈夫です」と答えていました。
ただ、これが失敗。確かに広島は(雪道に慣れていれば)98%の状況でFFで十分です。問題は残りの2%。例えばスキー場の駐車場直前のツルツルに磨かれた坂道など、FFではどうしても登れない、あるいは一度止まると発進できない坂道があるのです。また、FFで十分とは言っても不安定な車両を常に微修正しながら運転するのは疲れます。子ども連れのスノボはホントに疲れる。運転中に疲れていては満足に子どもの面倒を見れない。満足度120%のCX-5で唯一不満と言うか選択ミスだったのが、AWDではなくFFを買ってしまったことでした。
結果、次の車を買う時はAWDに決定。むしろ、前車CX-5がFFだったことも、3年を待たずしてCX-8に乗り換える決断ができたポイントでした。
これらの経験から「私はずっとFFに乗っている。経験上雪道はFFで十分だ。」という人は強がりでありAWDの魅力を知らないのだと思います。FFとAWD両方乗ったことがあるオーナーがFFで十分と言うのならその気持ちの半分は理解できます。ただ、残りの半分はそんなに厳しい道走ってないからでは?と思うのも事実。ドライブや雪道を走る機会が多い人で6世代以降のマツダAWDやスバルのAWDからFFに乗り換えた人が「FFで十分。」と言うなら「参りました。」です。ただ、そんな人はいない。
何が言いたいかというと、FF(FR)とAWD両方乗り継いだ上で評価すべきと言うことです。雪道なんて年に1回しか走らないのでは話になりません。新雪、圧雪、ガチガチのアイスバーン、それこそ高速が通行止めで一般道で大渋滞にハマったり、クソ寒い中チェーン巻いて、時にはチェーンが外れたりパンクするなど、一通りのイベントを体験してからこそ意見なり、それは違うよと言えるのではと思うのであります。
前置きが長くなりました。
本題に参りましょう。
AWDの仕組み
まず最初にAWDの仕組みから。
のっけから参照で申し訳ございませんがAWDの仕組みについては自動車メディア「CarWatch」の記事が大変参考になりますのでこちらを一読ください。北海道剣淵試験場で2015年に開催された冬期試乗会の技術説明会の解説記事となっています。
マツダの新世代4WDシステム「i-ACTIV AWD」の仕組み
冬期試乗会のレポートはこちらをどうぞ。雪道におけるFFとAWDの違いを分かり易く解説されています。
マツダの新世代フルタイム4WDシステム「i-ACTIV AWD」を北海道 剣淵町で体感してきた
AWDを買って失うもの
次にCX-8のAWDを買って失うものから。言い方を変えるとAWDを選ぶデメリットになります。
なお、この記事の内容はCX-3、CX-5、アテンザなどのマツダの他のAWDモデルにも当てはまります。オーナーの方は適宜読み替えてください。
23万円
AWDを選ぶことで最初に失うのは銭です。
FFに比べ23枚多く諭吉を失うのです。
23万円あれば何が出来るでしょうか。
家族でディズニーランド旅行?(広島から家族4人では足りないけど)フルサイズの一眼レフカメラも買えます。外食やお出かけに使うも良し。お小遣いが月1万円のサラリーマンなら2年分の小遣いです。23万円はデカい。
燃費
AWDを選ぶことで燃費が若干悪くなります。
CX-8のディーゼルXDモデルのWLTCモード燃費で比較するとCX-8のFF15.8km/Lに対しCX-8のAWDは15.4km/L、約2.5%燃費は悪化するのです。
仮にFFモデルの毎月の軽油代(ガソリン代)を8,000円とした場合、2.5%燃費が悪いと毎月200円余分に軽油代(ガソリン代)を多く支払う形になります。200円といえば缶コーヒー2本。
毎月200円はデカ、、
くはないですね。小遣いが500円などの小学生には大金かも知れませんが我々オッサンにとっては誤差の範囲。
こうして比較するとマツダのAWDは燃費が良いため、その差は僅かであることが分かりました。雪道などではAWDの方がトラクションのロスが少なくFFとAWDの燃費差はさらに少なくなります。アンチAWDから「どうせ燃費悪いでしょ?」という声が聞こえてきたのであえて書きましたが、燃料代の差は無視して良いと思います。
(AWDの実燃費はもっと悪くなるでしょ?という指摘もあると思いますが、実燃費は走り方や状況次第でいくらでも変わります。シロウトが比較しても仕方ないので気になる方は自分で乗り比べてください)
約70kgのウエイト
CX-8のAWDを選ぶことで若干車が重くなります。
CX-8のディーゼルXDモデルで比較した場合、FFで1,830kg、AWDの場合は1,900kgとなります。その差、約70kg増し。
一般的に車は重たくなると加速が悪くなる、燃費が悪くなるといったネガティブな方向に振れます。反面、重い方が車が安定して乗り心地が良くなるなどのメリットもあります。こちらについては実際にFFとAWDを乗り比べた感想やジャーナリストの試乗レビューを読んでも総じてAWDの方が乗り心地や走りのバランスが良いなど、AWDの方にメリットが多いと感じます。
リアデフオイル交換作業
FFに比べリアにデフが付く分、デフのオイル交換が必要になります。メンテナンス費用としてFFに比べ余分に銭を失います。ただし、金額的には大したことなく、数年に一回、数千円程度の出費です。どうでもいいですね。
その他にもAWDを選ぶことで失うものやデメリットを探しましたが、特にありませんでした。まとめると、AWDを選ぶデメリットは初期投資の23万円くらいです。余裕のある人、また余裕がなくても後悔したくない人は頑張ってAWD買いましょう。AWD代として23万円必要になりますが、CX-8は車両価格400万円前後。AWDを手にするコスト増はたったの5%程度なのですから。
AWDを買って得られるもの
続いてCX-8のAWDを選んで得られるもの。AWDを選ぶメリットです。
AWD機構
まず、物理的に以下のAWD機構を手に入れることができます。
●PTO(パワーテイクオフ)ユニット
エンジンのトルクを変換してプロペラシャフトに渡す機構です。
●プロペラシャフト
文字通りシャフトです。
●電子制御アクティブトルクコントロールカップリングユニット(リアデフ)
前後のトルク配分を自動で行う電子制御アクティブトルクコントロールカップリングです。
カップリングユニット内には湿式多板クラッチが内蔵されており、この多板クラッチをフリーにすると100:0のFF状態、完全圧着すると50:50の直結4WD状態になります。なお、フロントデフやリアデフには左右の差動制限は組み込まれておらず、片輪のトルク抜けにはDSC/TCSの制御に使われているブレーキで対応しています。
●AWD制御用のセンサー
1秒間に200回演算してトルクを制御します。
FFに比べ、23万円を支払うだけでこれだけの機構が手に入ります。
これだけの内容を考えると、23万円はむしろ安い?
AWD専用装備
AWDを選んで得られるものはそれだけではありません。
AWDモデルは以下のAWD専用装備が付くのです。
●ヘッドランプウォッシャー
ヘッドランプ用のウォッシャーです。ヘッドランプ下に格納されており、スイッチONでヘッドランプに付着した雪を払い落とすことが出来ます。LEDライトは温度が上がらないため、雪道走行が多い人には必需品となっています。
●リアフォグランプ(運転席側)
心配性の人にうれしい、視界が悪い時に後続車に自分の存在を知らせるリアフォグランプ。意味も無く点灯してるとTwitterなどに「マジ迷惑!」などと晒されるので要注意。
●AWDオーナメント
AWDであることを示すAWDオーナメントです。
●フロントワイパーデアイサー
熱線でフロントワイパー部分の雪を解かすデアイサー。スノボなどでスキー場に行ったとき、ワイパー部分の雪を払うのが楽になる大変ありがたい装備です。
●大型ウォッシャータンク&ウォッシャー液残量警告灯
AWD専用装備はまだあります。FFに比べウォッシャータンクが大型になる他、ウォッシャー液残量警告灯まで標準装備。
23万円でAWD機構と各種センサー、これらの専用装備が手に入ることを考えたら、決して高くはありません。
FFとAWDを費用で比較
FFとAWDを費用面でします。
3年、5年で乗換える場合、AWDモデルの方が査定が高くなる傾向にあります。元値が高いので下取り査定価格もその分高い。仮にFFモデルより10万円高い査定が付いた場合、3年、あるいは5年AWDに乗るコストは23-10の13万円となります。これはお得。
その他にも雪道・氷上の登坂性能に優れるAWDはFFほど神経質にスタッドレスタイヤを選ぶ必要がありません。極端に言うと、FFなら3年目のスタッドレスで厳しい状況もAWDなら4年目でも楽勝で会ったり、1ランク性能を落としても大丈夫だったりします。チェーンもAWDの場合はまず使う必要性が無いので安価な金属チェーンをラゲッジに積むだけで済むなど、AWDを選ぶことでランニングコストを押さえられるメリットがあります。
ついでに言うと、値引きの面でもFFよりAWDの方が大きくなる傾向があると思います。車両価格が安いよりは高い方が値引き幅が大きい。また、オプション無しよりオプションをしこたま付けた方が値引きが期待できるのと同様、定価でFFに比べ23万円高くなるAWDモデルの方が値引きが大きくなるのです。なので、FFとAWDの価格差は定価で見れば23万円ありますが、値引きを考慮するとそれ以下になるはずです。
FFとAWDを走りや乗り心地で比較
マツダCX-8の場合はシャーシや足回りのセッティング、GVCの制御、重量バランスや剛性面からAWDの方が乗り心地や走りのバランスが良いとされています。雪道や悪路を走ることが無い人でも、AWDを選ぶメリットがあるということです。
こちらについては過去記事にも書いてますのでこちらをどうぞ。
乗り心地と走りの質感がまるで別物?CX-8はFFよりもAWDがおすすめな理由
CX-8は2WD(FF)とAWDどっちを買うべき?実際に走り比べた感想をまとめてみた
AWDを買って良かった!CX-8で広島から島根まで雨の一般道を走って分かったこと
FFとAWDを精神衛生面から比較
AWDを選ぶ忘れてはいけないメリットに精神衛生面のメリットがあります。
今年の年末のように大雪予報が出ると、FFではスタックなどの不安から「登れるか?」「たどり着けるか?」といった不安が生じますが、AWDに乗換えてからそのような心配の大部分から解放されました。
※チェーン規制や他の車からの貰い事故、渋滞などは気にする必要はある
FFに乗っていた時に比べ、この違いは大きいです。特に子ども連れでのお出かけ頻度が高いとスタックなどで交通の足止めやチェーンを巻くのも煩雑なので非常に助かります。個人的にこのような不安から解放されるだけでもAWDを選ぶ理由になります。雪予報の度にスタッドレスタイヤだけで登れるか、あそこで前の車が止まったらどうしよう、だったら早めにチェーン巻くか、なんて考えるのは毎年3万円貰ってもイヤというもの。そう考えたら、AWDの23万円高はむしろ安いと思います。
余談
余談になりますがマツダ、特に販売店はこの i-ACTIV AWDをもっとアピールして良いと思います。例えば、私のようにスノボなどのに行く人や、子ども連れで雪遊びでもしてみようという人が車を買う時に、これらの説明をして「いや、AWDなんて要りません。FFで十分です。」と言い切れる人はどれだけいるか。
難しいのは車選びには予算があることです。仮にAWDを選ぶことで予算を超えてしまう場合は、だったらFFでいいや、、となるのは仕方ない。そこでグレードを落としてでもAWDをおすすめできるかと言えばそうではないケースが多いと思います。
ただ、控えめに言って完全に出来が良く性能を考えるとバーゲン価格と言っても良いAWDが選べるのに、その魅力を伝えきれないのはモッタイナイ。AWD乗ったこと無い人にAWDの魅力や必要性を理解してもらうのは難しいです。
i-ACTIV AWDの魅力や価値は販売店がキッチリ伝えて、そのうえでユーザーが費用対効果を判断できる仕組みがあるべきです。
さいごに
最後になりますが、マツダ新世代4WDシステム i-ACTIV AWDを選ぶ最大のメリットは雪道や落ち葉の多い道、濡れた路面などででより安全に運転できることです。安全性が高く、疲労を抑えることができます。
マツダのAWDはスリップする前に後輪にトルクを配分するので、従来までのスタンバイ四駆と安定感は全くの別物。最新のマツダAWDは下り坂で後輪にもエンジンブレーキを掛けるため、山道の下り坂などでも安定感が段違い。GVCも前後輪で制御されるため、FFに比べ車両の安定性が高く同乗者も快適です。
AWDを選ぶために23万円の追加予算が必要ですが10年乗れば年あたりたったの約2万円。5年で乗換えた場合は年約5万円、下取り査定価格の上乗せを考慮するとその差は更に小さい。
FFとAWDどちらを選ぶべきか。
迷う必要はありません。AWD一択です。
以上。